ドイツの教会とその周辺 No.
1 聖ゲオルグ教会(St.
Georg Kirche) /ライヘナウ島 (Insel
Rechenau)
ドイツの教会としてまず第一に取り上げるのは、ドイツの南端・ボーデン湖に浮かぶライヘナウ島の聖ゲオルグ教会だ。なぜ第一なのか?ケルンの大聖堂やミュンヘンの聖母教会よりも真っ先に取り上げるだけの理由があると考えるからだ。聖ゲオルグ教会はドイツで最も初期に作られた教会の一つであり、2000年秋に世界遺産にも登録された。会堂の内壁には11世紀に描かれた見事なフレスコ画が残っている。一部剥げ落ちでいるものの、それがかえって歴史を感じさせる。教会の外形は素朴で全く偉ぶった所がなく見ていても飽きが来ない。さらに、個人的にも思い出深い教会だ;1994年3月から半年間コンスタンツ大学に研究留学した際にライヘナウ島に下宿することになり、日曜日のミサに度々出席した教会なのだ。
ゲオルグ教会(St. Georg Kirche)
ライヘナウ島 教会内壁のフレスコ画
聖ゲオルグ教会は、8世紀初め(724年)フランク王国から巡回布教に来たピルミン神父によって修道院としての基礎が築かれ、888年に現在の石造りの教会が作られたと言われている。ピルミン神父が最初に辿り着いた所はボーデン湖畔の町コンスタンツであったが、草が生い茂る無人島ライヘナウの方が修道院に適していると考えたらしい。島には他にプロテスタント教会が1つと聖ゲオルグ教会と並ぶ古いカトリック教会が2つある。島に住む人々の信仰心はとても篤く、年3回、この島民だけが祝う教会の祭りがある。その日は全島民が休日をとり、島の中央にある教会でミサを行った後、伝統的な衣装をつけて島内を行進する。楽しい一日である。
Primmin神父の像 聖マルコ祭りの行列
ボーデン湖は、太古の昔、氷河が造った窪地にスイス東部から発するライン川が注ぎ込んでできた湖で、スイス、オーストリア、ドイツの国境に位置している。ライヘナウ島はボーデン湖にある最大の島で、Reichenau=rich fieldという名の通り、温暖な気候に恵まれていることから神父の指導により野菜作りが始められ、今ではドイツ有数の野菜の産地となっている。また、湖で漁業を営む島民が住んでいる。島内には新鮮な野菜をふんだんに食べられるサラダレストランや朝の漁で取れた淡水魚料理のレストランがあり、サイクリングで島を訪れる人々に人気がある。聖ゲオルグ教会の周囲には畑が広がり、サラダ菜、トマト、ズッキーニなどが作られている。ワイン用のブドウ(Mueller Thurgauという種類) の木も多い。ミサの中で、神父が、漁業の安全と野菜作りが悪天候による損害から免れるようにと祈るところがライヘナウ島らしい。
ボーデン湖で捕れる魚類 島と本土を結ぶ道(ポプラ並木)
もう一つ島の特徴をあげよう。島と本土を結ぶ道(人工の堤)の両側は特別自然保護地域に指定されており、湖畔には芦が厚く茂り、バンや鴨などの野鳥が安心して棲める場所になっている。島の入口の自然保護センターではボーデン湖についての環境情報が入手できるだけでなく、地域の環境教育のセンターにもなっている。