この福音書は、愛する者の死を前に立ち尽くし、無力感にさいなまれているわたしたち、その悲しみの中で不信仰に陥り、頑なになってしまった全ての心をもっと大きな力でゆすぶる神の祝福の物語なのです。
主イエスはそんな彼らの、そしてわたしたちの不信仰と頑なな心をおとがめになります。私たちの不信仰はイエスによって責められるべきもの、お叱りを受けるべきものなのです。甘えるわけにはいかないのです。「あなたの不信仰は無理もないことだ。よく分かるよ」などとは決して仰らないのです。しかし、またわたしたちの心が頑なだから、不信仰だからここから出て行けとも言われません。不信仰で心頑なな弟子たちに、復活のからだ、栄光の姿となられたご自身を示し、「全世界に行って、すべての造られたものに、福音を宣べ伝えよ」と送り出して下さるのです。
マルコの福音書の価値はここにあります。弟子たちの不信仰を遠慮なく書きました。てらわず、飾らず、ごまかさないで、ありのままに書き記し、そして著者もまた自分をそこに重ね合わせ、多くの復活の証人と共にこの福音を告げ知らせてくれたのです。もはや死は最後の勝利者ではないのです。信じましょう。感謝しましょう。そして祈りましょう。
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