ダビデは不条理にもサウル王から命を狙われ逃亡生活をしていた。荒野から荒野へと逃げながら心の休まる時はなかった。あるときダビデの隠れていた場所が密
告されサウル王に見つかってしまった。サウル王は三千の兵を引き連れ出陣した。この人数からみてもサウル王のダビデに対する執念がうかがえる。ダビデはそ
のことに気付いて逃げるが、マオンの荒野で追いつかれ、取り囲まれてしまった。万事休す。
その時、サウル王の使者が来て「急いでお帰り下さい。ペリシテ人が国に侵入しました」(サムエル上24:27)と報告した。それを聞いたサウル王はダビ
デを追うのをやめて引き返した。ダビデは寸前のところで命が救われた。その後もダビデにとって眠れぬ夜を何日も過ごし、夜空を眺めながら今日も生きながら
えたことに感謝した。だが、夜明けが来ると、今日はどうなるのかと不安でいっぱいになった。
ダビデの祈りは、わたしの声を聴いてくださいと言わんばかりに、時には嘆き、愚痴、不満、そして怒りであった。ダビデにとって信仰の世界はきれいごとで
はなく、神様に本音を打ち明け、どうすれば良いのか求める存在であった。何という素晴らしい信仰でしょうか。ダビデはこの祈りの中で困難な状況の中にあっ
て、いつも私の魂を支えてくださる方がいる事を知って困難な中でも生きていく力が与えられた。そして、この54編を読む私たちに「マスキール」わたしは
悟った。これを教訓にしなさいといった。
私たちの人生にも悩みや苦しみがあります。また、不幸がなければ人生幸せかと言うと、決してそうとも言えません。人生の幸福は、困難に出合わないことで
はなく、むしろ、あらゆる困難を乗り越えて勝利をおさめることにあります。故に、人生の困難に嘆くのではなく、私を愛し、私が生きるために、自らの命を捨
ててくださった主イエスの十字架の愛を信じて生きること。信じる者には主イエスが共にいて、私の魂を支えてくださり、その困難を乗り越え勝利する力を与え
てくださるのです。故に今日も活き活きと生きられるのです。