2001年1月14日

主日礼拝メッセージ

しるしを求める時代

マタイによる福音書12:38〜42

【要 旨】

 使徒パウロは「ユダヤ人はしるしを求め、ギリシャ人は知恵を探す」(コリント1:22)と書き送りましたが、その通り、いつの時代もイエスさまが真に神の子であるというしるし(証拠)を求める者です。そこでイエスはヨナと南の国の女王を例話に、ご自分が真に神の子であることを明らかにされたのが、今日の物語です。

 ヨナ(旧約聖書「ヨナ書」参照)は魚に食べられて、その腹の中に三日もいたのに死ぬことはなく、陸地に吐き出されました。イエスは言われます。「わたしはヨナにも優る者である」と。何故ならイエスこそ十字架に死んで墓に葬られて尚三日目に復活されたからです。また南の国の女王(列王記上10章参照)ははるばるソロモンの知恵に学ぶためにやってきました。処が「ソロモン王の知恵は国で聞いていた以上のもので驚きました」と感服したと言うことです。

 イエスは言われます。「わたしはソロモンに優る者である」と。なぜなら、イエス・キリストこそ「全知全能の神の御子」だからです。ヨナにまさる者、ソロモンにまさる者、神の子イエス・キリストが今ここに、あなたの前に臨在しておられるのです。恐れかしこみ、拝しましょう。


 【主日・成人式礼拝】                  2001.1.14

 

 ファリサイ派の人々は、主イエスから「聖霊を冒涜する者、聖霊に言い逆らう者は後の世までも赦されることはない」と言われた時、それでは自分たちこそが悪魔の子というのかと猛烈に反発して「先生、あなたがそこまで思い切ったことを言えるような者かどうか、一つ証拠を見せて貰いましょう」と食ってかかりました。

使徒パウロは「ユダヤ人はしるしを求め、ギリシャ人は知恵を探す」(コリント1:22)と言いましたが、その通り彼らはイエスにしるしを求めます。しるしと訳されたギリシャ語「セーメイオン」は証拠と言う意味です。そこでイエスはご自分が真に「人の子」、天の父の許から来た「神の独り子」であると言う重要なしるし、証拠を示そうと、ヨナと南の国の女王を例話に用いられました。

 

 先ずヨナを例にされた意味を理解するためには、旧約聖書の「ヨナ書」を読んでいないと分からないので、まだ読んだことのない人の為にあらすじを紹介しましょう。昔ヨナという人がいました。ある日、神はヨナに「大きな都ニネベに行って『神はあなたがたの悪い生活を一部始終見ておられる』と告げなさい」と命じました。

 しかしヨナはこの命令を無視して遠い国へ逃れようと船に乗りました。処が神は不思議な方法で彼を海に投げ出し、大きな魚に食べさせました。しかし、ヨナの体は神に守られて魚の胃液によって溶かされることはありませんでした。一つ一つ不思議なことを経験する内に、ヨナの心は次第に神に対して素直になりました。陸上に吐き出されたヨナは今度こそ神の命令通り、ニネベの都に入って「後40日したら、ニネベは滅びる」と告げ回りました。このメッセ−ジを聴いた王は全国民に「私たちはみんな罪を悔い改めて神の赦しを請わねばならない。そうでないとこの国は滅びてしまうから」とお触れを出しました。国民は皆、王の言葉に従って神の御前に悔い改めました。神はそれを見て、この町を罰することを思い留まって下さったのです。

 面白くないのはヨナです。こんなことならどうしてあのまま船旅を楽しませて下さらなかったのかと呟き、神が彼の為に備えて下さった「とうごまの木」をそれとも知らず、木陰でふて寝してしまいました。それも束の間、夜明けと共に沢山の虫が木の葉を一枚残らず食べてしまったものですから、太陽が高く昇りギラギラ照りつけると、陽射しを遮るものが何もないので、彼は暑くて溜まりません。そこでまた怒り狂って神に呟きます。

 その時、神はヨナに優しく仰いました。「お前は一夜にして生え、一夜にして枯れたこの一本のとうごまの木をさえ惜しんでいる。ましてや私にとって、12万ものニネベの人々を惜しまないでいられようか。ヨナ書はそこで終わっています。

 

 イエスがヨナの物語を引用されたのは、ヨナが魚のお腹の中で過ごした三日という日にちから、ご自分が後しばらくしたら十字架に死んで墓に葬られる三日という日にちをだぶらせて、神の救いのご計画が後もう少しで実現することを教えるのです。その救いの対象はニネベの町にも等しい心頑ななファリサイ派の人々にも及ぶものであると言うことを悟らせる為なのです。

 更にヨナの物語を引用されたイエスの意図はもう一つあります。それは真の神を信じているイスラエル人ヨナにとって偶像の神を拝むニネベは許し難い宿敵です。ところが個人的には滅びるが良いと思うほど憎いニネベの町に、神は敢えてそのヨナを預言者としてお遣わしになったと言うことに、この物語を引用なさった意味の深さがあります。言ってみれば神に襟首つかまれるような形でヨナは結局ニネベへと遣わされて行きました。イエスはそうではありません。彼はニネベにも等しい悪しきこの世の真っ直中に入って来て下さいました。拒まれ、十字架に釘付けられるであろうこの世界に彼はご自分の方から入ってきて下さいました。

 何故そこまでする必要があるのでしょう。それは私たちを救う為です。彼が私たちに対してそこまでする理由はどこにあるのでしょうか。ありません。ただ一方的な愛がそうさせるのです。イエスが全世界に示すしるし、それは私たちの罪の贖い代として十字架に死ぬことであり、三日目に墓から甦ることなのです。それ故にこの方はヨナに優る方なのです。

 

 もう一人、イエスは南の国から来た女王の物語(旧約聖書列王記上10章参照)を例に挙げて「彼女に学べ」と教えます。旧約聖書によると南の国とはシェバ、今日のアラビア半島南部のイェーメン辺りであることが分かります。そんなに遠い国からはるばる女王はソロモンの知恵の豊かさを伝え聞いて、その知恵に学ぶためにやってきました。彼女の国にも、また他の国にも聡明な人、人品卑しからぬ人はたくさんいたでしょうに、どうしてソロモンでなければならなかったのでしょうか。ソロモンの知恵には神への畏れがありました。そこがこの世に数多の賢者がいても、女王の心を動かすまでに至らなかった所以です。ソロモンとは「神に愛された者」と言う意味があります。神に愛された者の知恵はこの世の知恵にもまして魅力があります。神に愛された者の知恵には命が満ちているからです。この世の知恵は神を否定します。この世の知恵は神を必要としません。しかしそれは木の幹から独立した枝と同じです。しばらくはそこに美しい花があり、瑞々しい葉っぱを見ることが出来ます。しかし幹から独立した枝には命がないので、時間の経過と共に花はしぼみ、葉は色褪せてゆき、やがて腐れ果ててしまうことでしょう。南の国から来た女王にはそれが分かりました。彼女はいみじくも述懐しています。「わたしは、ここに来て、自分の目で見るまでは、そのことを信じてはいませんでした。しかし、わたしに知らされていたことはその半分にも及ばず、お知恵と富は噂に聞いていたことをはるかに超えています」と(列王記上10:6〜7)。

 

 このようにイエスはシェバの女王の例を引いてファリサイ派の人々に「ソロモンの知恵に学ぶために遠くから旅してきた彼女の熱心と謙虚さに学びなさい。しかしソロモンに優る者があなたがたの目の前にいる。この私からどうして真の知恵を学ぼうとしないのか」と。特に42〜43節に注意して下さい。イエスは「…にまさるものがここにいる」とは言わず「ここにある」と言われました。

 この「ある」という動詞はヨハネ8:58の「はっきり言っておく。アブラハムが生まれる前から『わたしはある』」の「ある」と同じで、それは出エジプト3:14で神が「わたしはあってある者」と言われた「ある」と全く同じなのです。彼らが目の前にするイエスは彼らを教える資格があるという以上の方、神であることをご自身の口から明らかにされたのです。

 ファリサイ派の人々にまさる者、ヨナにまさる者、ソロモンにまさる者、神の子イエス・キリストが今ここに、礼拝を捧げつつある私たちの前にも臨在しておられるのです。恐れかしこみ、拝しましょう。

 

祈りましょう。

 天の父なる神様、あなたの御名を崇め、讃美します。

今朝私たちの教会は嬉しい日を迎えました。この教会にとって久しぶりに成人に達した人と共に礼拝を捧げることができたからです。この良き日、あなたはこの姉妹に、また私たち一同に、これからの人生の指針とも言うべきメッセ−ジをお与え下さいました。ヨナは行きたくない処に結局遣わされて、神の御心の深さ、広さ、長さ、高さを知りました。はるばるシェバの国から来た女王はソロモンから神に愛された者の大いなる知恵を学びました。

 私たちは毎週、あなたの御言に聴き、神の知恵に圧倒されています。あなたこそ命の創造主、全知全能の神だからです。木村華子姉はこれから始まる人生において困難な問題に遭遇することがあるでしょう。そのような時、この世は彼女に一時の華を示し「これに聞け、これに学べ」と誘惑することと思います。どうか、そのような誘惑に負けることなく、環境に惑わされず、或いは距離を厭わず、キリストの教会に来てあなたからの真の知恵にこそ学ばせて下さい。

 私たちの人生は私たちの為の人生ではなく、あなたから賜った人生であり、あなたが行けと言う処に行き、あなたが語れと言われる言葉を語り、あなたがせよと命じられることをすることが真に祝福された人生の証であることを悟らせて下さい。木村華子姉をその一人としてお導き下さい。私たちの救主イエス・キリストの御名によってこの祈りをお捧げします。アーメン。

 


福音メッセージ一覧

集会案内

質問・メール

キリスト教イロハ

聖書を読む